schizophrenie


chapterⅤ



奇跡の人



マザーテレサ語録を読んでいた

ひょっとしたらもう死んでいたかも知れない

死に際して私達の全てが天に召される

その為にそうしていたのかも知れない

私には祈る事しか出来なかった

運命がもうこれで終わりでない事を

そしてとどめを刺される様に

その時愛の強さについて学んだ

孤独の中 最後の力を振り絞って探した

どんな武勇伝より その愛の言葉は力を持っていた

完全に枯れ果てた大地は 小さな草の存在を

一つだけ許すとでも言った様に 本当にほんの僅かずつ潤っていった

溺れた心は叫び続けていた

「あと少し呼吸が出来れば、次の潜水で水を飲まなくて済むのに」と

沈んでは少しだけ浮かび、ほんの僅かなその時間に

次に沈んだ時のイメージと恐怖に抗いながら可能な限り息を吸い込む

いつ終わるとも知れずそれは まるでシーシュポスの神話の様に繰り返された

飲んだ水を吐き 容赦なく空気を詰め込まれ 肺はとうに限界に達していた

奇跡は私達がまだ幼子だった頃の様に

さも「当たり前」とでも言う風に訪れた

彼の友人が叫び声を聞いたらしい

「すぐ助ける!持ちこたえろ!」と電話があった

虚構の世界に一人取り残され 既に朽ち果てた部屋で

それを受けた彼は声に出して呟いた 「乗り切った‥。」と

私はすぐ次の戦闘の準備に取り掛かった

正直 その奇跡にとても驚きながら