prologue
骨の髪
昼 間はあんなに青い空がこの時間にはどんよりと暗い
吸い込むように澄んだ暗さでもなく
薄い雲が街灯りを反射して
方 角によっては少し赤く染まっている
月は
そう月は昔の トランプのジョーカーさながら笑っているのだろう
月の輪郭こそが ニヤリと笑うその口なのだ
それは僕の不意をつき 一瞬の間一際輝き
世界がいくつもの顔を持った
あの真にリアルな時空へと僕を誘うだろう
そこでは憧れは畏怖と共にあり
その先にあるのは迷いのない眠りと
その先に待つシンプルな目覚めだ
僕は一度だけ骸骨の夢を見る
その骸骨の顔はありふれたしゃれこうべではなく
髪の毛までも骨で出来ている女の骸骨だ
それこそが僕の本当の世界だった
僕は恐怖に目覚め一瞬躊躇するが泣きはしない
泣くべき事が何もないからだ
そしてそんな恐怖も瞬時に忘れ去り
自分自身が生きる為に新たな世界に戦いを挑む
それが、僕がこの世に与えられた命だ